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金属セッケンと酸性セッケン [石けんまわりの化学(14)] [├ 用語・材料・化学っぽいこと]

金属セッケンと酸性セッケン [石けんまわりの化学(14)]

手作り石けんの過程で起こるいろいろな現象を少しまじめに考えてみるシリーズ
ご意見、ご感想はお気軽にコメント欄にお寄せください。わかりにくいことも極力補足できるようにいたします。



引き続き「石けんに酸を入れると・・・」の派生記事です。

前回の記事(石鹸水に酸を入れると [石けんまわりの化学(13)])で石けん水に酸を入れると「酸性石けん」ができると書きました。
酸性石けんは汚れに対して石けんが不足していたときなどに発生し、髪や食器がねちゃねちゃした手触りになる原因です。
石けんでの洗浄ではもうひとつ、金属石けんの発生が問題になります。これは石けん分子中のナトリウムやカリウムが水に含まれる硬度成分(マグネシウムやカルシウムなど)と入れ替わることで生成する、水に溶けない脂肪酸カルシウムや脂肪酸マグネシウムです。
金属石けんは白っぽい微粉末で、シャンプー後の髪がキシキシしたり、色の濃い洗濯物が白い粉にまみれたようになったりします。
※石けん生活では厄介な金属石けんですが、工業的には非常に利用価値があり、さまざまな用途に使われています。


■金属石けん

2 R-COONa + [Ca2+] ←→ Ca(R-COO)2 + 2[Na+]


(復習)■酸性石けん
石けんが水に溶けているとき、一部の石けん成分(R-COONa)は加水分解して脂肪酸(R-COOH)と水酸化物イオン(OH-)が生じ、石けん水は弱アルカリ性になります。
R-COONa + H2O ←→ R-COOH + [Na+] + [OH-] ・・・ (式1)

またこの分解で生じた脂肪酸は石けん成分と結合して酸性石けん(R-COOH・R-COONa)になります。
R-COOH + R-COONa ←→ R-COOH・R-COONa ・・・ (式2)

(乱暴ですが) 式1と式2を足すとこんな感じ
2 R-COONa + H2O ←→ R-COOH・R-COONa + [Na+] + [OH-] ・・・ (式3)
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さて、金属石けんと酸性石けんを写真に撮ってみました。

酸性石けんと金属石けん

石けん水にクエン酸水とにがりを添加しました。
クエン酸水を加えたもの(左)には酸性石けん、にがりを加えたもの(右)には金属石けんができています。
液はともに白濁していますが、酸性石けん側は油状のものが混じったようなもやもやした濁り方で、水面は油滴が浮いてギラギラしています。金属石けん側はなにかもろもろの粉っぽい物質が発生していて不均一です。

この白いところを布にこすり付けてみます。
布に付着する金属石けんと酸性石けん

右側、金属石けんはスプーンにも布にも白い粉状になって付着するのがわかります。洗濯物にこのような粉がつくときには洗濯槽の内側にも粉がついていることが多いです。

左側、酸性石けんは、のせた直後は白っぽく見えますが、水分が布にしみこんでしまうと見えなくなります。ただ手触りはごわごわしていて、水ですすいだ後もさらっとしていない違和感のある手触りです。
スプーンも一見透明ですが、油膜でギトギトです。


■金属石けんをリン酢で落とす
金属石けんを酸ですすぐ

布の2箇所に金属石けんを付着させ、一度水ですすいだ後、片方(左側)だけクエン酸水でリンスしてみました。
白い粉はきれいに落とすことができました。
(布がぬるっと気持ち悪い手触りになったので、もう一回すすぎました)

しかしここで、金属石けんはどうなって消えたのかが非常に気になります・・・
白い粉は見えなくなるので何らかの形で溶けたことには違いないのでしょう。カルシウムやマグネシウムがクエン酸にキレートされると脂肪酸が遊離することになりますが・・・

そこで金属石けんをクエン酸水に溶かして様子を観察してみました。
金属石けんは石けん水に大量ににがりを入れて生成したものをろ過して一度水ですすぎました(写真右の白いもの)。
金属石けん

これを左側のクエン酸水に溶かしたもののアップが下の写真です。
金属石けんを溶かしたクエン酸水

なにか油のようなものが浮いています。
水面と器の境目あたりに付着したものや、金属石けんをすくって溶かすのに使ったマドラーに残ったものはねちゃねちゃべたべたとしています。
おそらく予想通り酸性石けんまたは脂肪酸が遊離したものと思われます。においを嗅いでみるとほのかに脂肪酸臭がします。(臭めです)

つまり、髪や洗濯物に大量に金属石けんが付着してしまった時に、濃い酸性リンスで無理やり溶かすと白いものは見えなくなっても今度は酸性石けんでべたべたになる可能性があるということです、風合いを取り戻すには結局洗い直ししかありません。。
したがってまず金属石けんがつかないような洗い方、濯ぎ方をマスターすることが肝要かも知れません。

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参考
石鹸百科
http://www.live-science.com/honkan/soap/soapbasic09.html
※石けん百科はリニューアルして石鹸百科になったとのことです。

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コメント 4

あーちゃん

ゆりくまさん、初めまして。
北海道より、あーちゃんと申します。
taoさんの掲示板よりこちらを拝見し、いつも参考にさせていただいています。
(ウルトラ抽出とか鍋で塩析とか…その他もたくさん)

石けん生活に切り替えた時に、最後まで難問だった石けんシャンプー。
(今は落ち着いているんですが)
今回のゆりくまさんの記事を見て、ストンと腑に落ちました。
経験的に『こうなんだ』とわかった事でも、科学的な説明が伴ってモヤモヤが晴れた気分です。
ありがとうございました~。

これからも、色々なご活躍楽しみにしています。
いつかトラバできるような綺麗な石けんを作りたいと思います。
by あーちゃん (2010-01-07 16:24) 

ゆりくま

■あーちゃんさん、こんにちは。
遠くからありがとうございます(笑)

シャンプー、失敗の原因がわからなくて悪循環に嵌まり込むパターンが多そうですね。キシキシとべたべた、と言葉でいってもうまく伝わらないですし・・・

きれいな石けん、お待ちしています♪
今後ともよろしくです。

by ゆりくま (2010-01-08 00:36) 

ion

こんばんは。今年もよろしくお願いします!
今回もなるほど!です。
石けんシャンプーの翌日に髪の根元についてた白い粉は金属石けん、ガスコンロの魚焼きグリルを石けんでお掃除した時にプンとにおった脂肪酸臭(こう言うんですね!)は、酸性石けんなのかな、と経験に置き換えてみる。
髪の場合は金属石鹸は気になるほどではないけど、洗濯だと気になりますね~
私の場合、金属石鹸は髪の根元や地肌だったので、気になりませんでした。

by ion (2010-01-08 21:02) 

ゆりくま

■ionさん
今年もよろしくお願いします♪

根元だけ金属石鹸っていうのもある意味テクニックがいるんじゃないですか?
魚焼きグリルに石鹸使うと、やっぱり臭いでしょ???
石鹸の脂肪酸だけじゃなくて、魚に多い不飽和脂肪酸(基本生臭い)と入れ替わったりして更に脂肪酸臭が増しているように思います。

ちょっと洗濯物を詰め込みすぎたりするとすぐ金属石鹸が出るので困ってます。

by ゆりくま (2010-01-11 11:30) 

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