図書館で「粉末石鹸製造教科書」という古書(昭和10年、中野徹堂 名古屋中央工業研究所 ・非売品)を発見し、作り方をメモしていました。
その方法をアレンジして洗濯用粉石けん(アルカリ助剤 入り)を作成してみたのでご紹介します。
(写真多く、長文です。塩析のことなど少々追記しました。)
上記の本はしょうゆや味噌を作るときに出る油(正子油)を利用して粉石けんを作ろうという内容で、先生が解説し生徒が質問する、という問答形式で書かれていました、
要するに大豆油ということですかね。関東、名古屋、関西でそれぞれ油の特徴があり、何処のは不鹸化物が多くて石けんになるのが早い、などと考察しているところが今も昔も変わらない感じでおもしろかったですよ。またできた石けんを使った防虫剤(乳剤)の作り方など豆知識もありました。
■本による手順(超要約)
1)油を弱火で50℃に温め、温度を保ってかき混ぜながら苛性ソーダ水を6回に分けて加える。苛性ソーダを入れ終わって良く混ざったら沸かない程度に温度を上げ、20分熟成
2)炭酸ソーダを2回に分けて加える
3)広げてよく乾燥させる。
4)粉砕機や杵と臼ですりつぶして粉にする
まあ、ホットプロセスの石けんに炭酸ソーダを加えるということですね。
長くなるので今回はホットプロセスの部分(1)の説明は省きます。
ご経験のない方は例えばTAOさんサイトの方法をご参考に→こちら
では作ってみましょう♪
■道具など
ホットプロセスで手作り石けんを作るのに必要な道具、材料に加えて必要なものはこれだけ。
・炭酸ソーダ (炭酸ナトリウム、炭酸塩、洗濯ソーダ、ソーダ灰) ナチュクリや石けんに力を入れているお店、東急ハンズ、通販で買えます。 ・すり鉢または乳鉢 (今の時代ならフードプロセッサーやミルサーでも。) | |
■材料
古書のため、単位が升や匁で書かれています。
油の比重を0.9くらいと仮定して 300gバッチに換算してみました。
廃油があると良かったのですが運悪く先日キッチンソープにしてしまったので、新品の油を使います。
目的は洗濯石鹸のため、水への溶けやすさと洗浄力を重視して泡立ちのココナッツとハイオレックのひまわり油としました。
テスト用レシピ(300gバッチ) | (参考)オリジナルレシピ |
ひまわり油 210g ココナッツ油 90g 水分 124g (40%) 苛性ソーダ 46g (鹸化率100%) 炭酸ソーダ 200g | 正子油 1斗 苛性ソーダ30度ボーメ 5升 曹達灰 2貫5百匁~3貫匁 |
※レシピ組み立ての補足:ボーメ度(比重による濃度判定)を正確に換算できないので以下のようにしました。
体積で2:1のためオイル300gに対して苛性ソーダ水として170g強くらいと想定しました、鹸化率100%分の苛性ソーダ46gと水124gを足して170gです。結果的にですが水分40%のレシピとなっています。ホットプロセスのため、水分40~45%はまあ妥当な数字でしょう。
鹸化率は101%くらいで置いてもいいかと思います。
炭酸ソーダの重量は173~208gと換算されたので、キリ良く200gとしました。できあがる石けん分と炭酸ソーダが6:4くらいに仕上がる見込みです。市販の炭酸ソーダ入り洗濯石鹸は炭酸塩30~40%程度のものが多いので、これも妥当な数字と思います。
■作り方
1) | ホットプロセスでベースの石けんを作る |
| ホットプロセス中。今回は最初からぬるめの湯煎にかけてグルグルしてしまいました。 最後の写真あたりで終了。マッシュポテト状になっています。1時間半くらいかかりました。 臭いのある廃油の場合はここで塩析します(今回は新品の油なのでパス) |
2) | 炭酸ソーダを2回に分けて加える |
| マッシュポテト状の石けんに炭酸ソーダを振りかけて混ぜ混ぜ。パイ生地を作るときにバターに無理やり粉を練りこんでいるときのような感じでしょうか。 冷めると固まってしまうので、火は止めていますが湯煎のお湯の上に乗せたままです。
なんとか混ぜ込みました。まとまってはいるものの粉っぽい感じです。 |
3) | 広げて乾燥させる |
| トレイに紙を敷き、塊の石けんを切り取るように取り分けて広げます。粗熱が取れたら大き目の塊を手でちぎったり揉んだりして細かくしました(炭酸ソーダはアルカリが強いため、手袋をしたほうがいいかもしれません)。この時点で水分が炭酸ソーダに吸われているのか、かなりかさかさしていて手にねっちゃり着くようなことはありませんでした。砂糖がけのコーンフレークみたいな大きさとキラキラ感。 このまま2-3日乾燥します。本には日にあててしっかり乾燥させろとありますが、そんな暇はないので室内放置。乾燥の終わりを見極めるのが難しいです。トレイごとはじめの重さを量って置けばよかったかも。 |
4) | 粉にする |
| 乾燥したフレークをすり鉢(または乳鉢)で磨り潰して粉にします。ゴリゴリ・・・ 完成♪ さらさら~。 一応ザルでふるって大きい粒は再度潰しています。 (右写真)すり鉢だと目が詰まるので、大きいのがあれば乳鉢のほうがいいかも。 再現ということですり鉢にしましたが、フードプロセッサーやミルサーがあれば更に簡単です。 |
| おまけ |
| ホットプロセスに使った鍋にこびりついた石けんでそのまま洗い物をしました。キメの細かい泡立ち。 でも炭酸塩入りでアルカリが強いため、手はバリバリになりました(鍋はピカピカになりました)。素手で使うには向いていませんね。
当然お洗濯もしてみました。 いつも使っているミヨシの粉石けん「そよ風」のスプーンを使って量りました。使用量の目安は水45リットルにすりきりいっぱい(54g)とのことですが、そよ風は炭酸ソーダ30%、自作は40%ほどの見込みでグリセリン分なども考慮すると5割強くらいしか石けん分がないだろうと判断し、2割くらい多めに入れてみました。
はじめの泡立て中。そよ風より泡立ちは悪い感じですね。でも汚れはしっかり落ちてふっくら洗えました。お湯を使いませんでしたが溶け残りなどもなかったようです。 |
■まとめと感想
ほぼ完璧な粉石けんができました。
意外と簡単だったし、ちゃんとしたものでした。フレークになるところがなんともおもしろい~。
我が家では廃油があまり出ないので、いつ次回があるか分かりませんが、楽しかったので機会を見つけて配合の工夫をしてみたいと思っています。
大豆油やキャノーラで作れば更に水に溶けやすいものができたかもしれないな、とか、妄想は膨らみます。
テストとしては非常にうまくいきましたが、現実問題として自作を推奨するかという点では難しいところもあると思います。
洗濯石鹸は1回の使用量が多いので全量自作だとかなりの頻度で大量に作る必要があること、純石けん比率の高いものはできないこと、新品のオイルで自作するより買ったほうが安くて品質が安定していること、ディープな廃油を使った場合に臭いの問題で塩析が必要になると大変(洗濯物に残る臭いって気になる!)、など。
粉石けんはメーカーによる差が本質的に小さい商品ですし、自作したものもグリセリンが残っている以外はさほど変わらない、つまり手作りの良さを出しにくいものだということです。廃油の活用方法の一つとして、という位置づけが適当かもしれません。
(もちろんメーカーのものは溶けやすい粉の形など工夫をされているので機能的には優れています)
■関連記事
廃油は今のところ入手していませんが、在庫固形石けんのリバッチで粉石けん作成の実験をしたのでご参考まで。
廃油の固形石けんから粉石けんを作るには 「お鍋で塩析 リバッチ粉石けん-4」の記事の塩析工程を参考にどうぞ。
(実験)リバッチ粉石けん -1 :そのままリバッチ。失敗気味。
(実験)リバッチ粉石けん -2 :アルカリ追加&塩析。まあまあいい感じ。
(実験)電子レンジでリバッチ粉石けん :HP面倒だったのでチンしてしまいました。
(実験)お鍋で塩析 リバッチ粉石けん-4 :お鍋一つでリバッチから塩析まで。
※吸湿しやすいので、フレーク、粉とも保存する際には密封容器に入れたほうが良いです。
※アルカリ助剤として炭酸ソーダ(炭酸塩)が入った粉石けんは普通に市販されています。アルカリ助剤とは、洗濯液のpH低下を防いで洗浄力を高めたり、水中の金属イオンを封鎖したりというように、石けん成分の使用量を抑えて機能を高めるために添加されているものです。石けん洗濯のノウハウや純石けん(助剤無し)との使い分け方はいろいろなところで紹介されているのでここでは省略します。
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