今回取り組んだのは、参考にしている昭和も初期の石けん指南本(学術書)にあった「銀色石けん」というレシピです。
軟石けん(カリ石鹸)に結晶性の高いソーダ石けんを少量配合することで「全塊に波紋絹状の光沢を発生せしめる」ものとのこと。
これにオイルの配合例、夏と冬のKとNaの割合が提示されているのみ。
カラー写真など掲載されている時代ではなく、名前と説明から妄想するしかありません。
「波紋絹状の光沢」のある「銀色石けん」
どうですか?
わたし的には昔のシャンプー剤みたいに光の加減でシルキーなキラキラが見えるような光沢を想像しました。
そしてリキッドソープの素を作ったことのある方はご存知と思いますが、希釈前のカリ石鹸は柔軟だけどもかなりの硬さがあります(下写真)。
なので、シルク状の光沢があって柔軟な固形の石けんができたら面白いと思ってスタートしたわけです。
■□■ 銀色石けん ■□■
参考書に記載の配合例
・綿実油 85、牛脂 10、パーム核油 5
・KOH : NaOH = (夏)4~5 : 1 、(冬) 3 : 1
これを参考に在庫状況から、綿実油→紅花油、牛脂→パーム油に変更、KOH : NaOH =4 : 1、水分は40%、鹸化率95%と設定。KOHの反応が終わってからNaOHを加えるとのことなので、はじめに一般的なリキッドソープのようにエタノールを使ってKOHを反応させた後、ホットプロセスでNaOH水を追加することにしました。
作成中
そして、これ↓
銀色・・・?
若干不透明で光沢があると言えないこともないですが・・・「波紋絹状の光沢」はどうかなぁ。
でもそんなことよりもなによりも、この柔らかさは予想外でした。ゆるめの軟膏あるいはパンに塗りやすそうなジャムくらいの物体です。
一般的にリキッドソープはカリ石鹸を20~30%に調整すれば安定な液状です(それより濃く希釈しようとすると溶け残りが出ます)。またソーダ石けんは結晶性が高くてかなり希釈しても固形を保とうとします。しかし昔からナトカリ石鹸という言葉があって、カリ石鹸とソーダ石鹸を混合したものはかなりの高濃度で液状を保つことができるというのです。
先日の記事「水酸化カリウムの話」でも触れたようにK石けんとNa石けんは水との結合の仕方が異なるので、2つが混ざることでお互いの性質を打ち消しあうような作用がおこるのかもしれません。
というわけで、私の銀色?石けんは正真正銘のナトカリ石鹸なのでしょう。
一瞬Naが多いほうが固形になりやすいような気がしますが、参考書のレシピをよく見ると、温度で石けんが固まりやすそうな冬のほうがNaの配合量が多いですね。ということは、ナトカリ石鹸としてはNaが多めあるいは比率が等分に近いほうが軟らかいということでしょうか。
これを応用してチューブやカップに入れて使いやすいクリーム状の石けんにしたらどうでしょうか。
ただし、Kが多い側だとスッと水に溶ける感じではないので、Naを多くするほうが使いやすいかも知れません。
(リキッドソープ希釈の時、K石けんの塊はすぐ膨潤したり表面からドロドロ溶けたりする感じではないですよね)
KとNa比率が逆転したらどうなるのか、どこまで軟膏状なのか、水分量は?など試してみたいところです。
何しろ正解が不明なので、銀色固形石けんの夢が破れたのかこういうものなのかはわかりません。
硬さはさておき、思っていたほど光沢が出なかったのは残念。
次回の古典石けんとしては、銀色石けんの仲間で含粒軟石けんというのに挑戦してみrたいと思います。
乞うご期待~
今回の軟膏状石けんをグリセリンと水でもうちょっと希釈して、クレイとグラニュー糖を加えた「シュガースクラブ石けん」を作ってみました。
なかなか良い感じです。
長文お疲れさまでした~
よろしければクリック応援くださいませ。
----参考書籍
「石鹸製造化学」 中江大部 1931・1950 内田老鶴舗