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手作り石けんの保管と劣化防止 [▼手作り石鹸のツボ]

手作り石けんは、その作り方の特性上、あまり保存性のよいものではありません。
一般的に手作り石けんの賞味期限(?)は1年と言われています。わたしの感触では、特別危険なグレープシードオイルなどでなくても、半年くらいで臭いの変化が始まるものもあるようです。

■酸化しやすい理由
1)「マイルド」「使い心地がよい」といわれる原料油脂は酸化安定性のよくない不飽和脂肪酸を含むことが多い。更に、スーパーファットと称して高価な痛みやすい油脂を足したりする。
→ 酸化する

2)過アルカリを避けるため、鹸化率100%とせず(ディスカウントして)過剰油脂を残す。
3)グリセリンを多く含み、湿気を呼びやすい。
→ トリグリセリドが加水分解 → 遊離脂肪酸の異臭、酸化

グレープシード油、ククイナッツ油、月見草油などは1)の代表です。その他の食用油にもある程度の割合で不飽和脂肪酸は含まれます。
酸化についての説明はうまくかけないので省きますが、保管の観点で劣化を防止するすべは、

「酸素・湿気」(劣化の直接要因)、「光・高温・金属」(劣化の促進要因)

を遮断することです。具体的には。。。

■作成時、余計な金属イオンを避ける
そういう意味で、ステンレスの鍋と泡だて器の組み合わせはよくないという意見もあるようですが。。。そこまでは考えすぎかなぁ。鉄分は乾燥ハーブなんかのオプションからも入ってしまいますし、後の保管に注意するということで許してもらいたいですね。

■作成時、不安定な油脂をスーパーファットしない
特に月見草油、ローズヒップ油。美容に良いけど高価で劣化しやすいオイルを石けんに入れても、熟成中に悪くするだけであまり意味がないと考えます。(すぐ洗い流されちゃうし)
新鮮なうちにそのまま肌につけるのが得策です。

■作成時 酸化防止効果のある成分の添加
ごま油、米油などには天然の酸化防止成分が含まれていて、リノール酸高含有の割に酸化しにくい傾向があります。このような効果を期待できるものとしては、ビタミンEオイル、ROE(ローズマリーオイル抽出物)があります。ともに、はじめにオイルに添加します。GSE(グレープフルーツシード抽出物)は水溶性のため、油の酸化にはあまり効果がないと考えます。
最近はウチの石けんが人手に渡る機会も増えてきたので、次回以降は毎回添加を考えています。

■熟成時は光(蛍光灯も)を避け、通気のよいところで十分乾燥させる。
木の戸棚、箱の中、コートされていない(吸湿性のある)ダンボール箱など。
わたしは、木のトレイで光が入らないようにダンボールで覆いをしています。

■保管時は光、酸素、湿気、高温を遮断。
わたしは個々の石けんを紙で包み、乾燥剤と一緒に缶にいれて温度変化の少なそうな場所に置いています。とりあえず光と湿気はブロックします。
高温を避ける究極は冷蔵庫ですが、、、今のところそんなに空きがありません。(実は動いていないのが1台ありますが、石けん様のために稼動するか? エアコンつけっぱよりは電気代安そうだし。)
酸素の遮断は、真空パック、窒素封入、脱酸素剤が考えられます。真空パックは石けんの呼吸(水分の発散)を妨げるのであまりよいとは思えません。窒素封入も一般家庭では難しいです。脱酸素剤、例えばエージ○スと冷凍用シールパックの組み合わせで使いますが、真空パックと同様、水分の逃げ場がないのが気になります。乾燥剤と一緒に封入すればいのかな。

我が家の石けんたちがこの夏を乗り越えられるのか。。。実験的に冷蔵庫も活用しつつ、観察してみたいと思っています。

参考)
Kanno’s HomePage 食品包装のページ:油の酸化について記載があります。
http://www.tcn.zaq.ne.jp/kanno/public_html/oil.htm


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石鹸大好き

再びこんばんは♪
す、すご~い。。。ですね。
まるで化学の授業のよう・・・。うっ、、、化学はニガテ。
でも、ゆりくまさんはとても分かりやすくて、素人の私でも興味を持って読むことが出来て勉強にるから、それもまた素敵♪
本当に心から尊敬してますよ。
酸化しやすいオイル、確かに困り者ですよね。
グレープシードオイルを使った石鹸は、私のもすぐに酸化臭がしてきました。
酸化っぽくなっているのに気づかずに、友達に差し上げてしまったからひどく後悔・・・
今は、えごまオイルやシソの実油が気に入っているのですよ。
あれもリノレン酸が主だから、非常に酸化が早いですよね。
イイ油って傷みが早いから悲しいですよ・・・
お邪魔しました。
by 石鹸大好き (2006-05-24 00:15) 

ion

こんにちは。初めまして。
たおさんのところとファイトクラブではいつもゆりくまさんのコメントを見て参考にさせていただいてます!
私は熟成中はダンボール箱に入れてます。梅雨時期はその中に新聞紙を置きますが、ウッカリせっけんに着いて新聞の文字がベッタリ、、なんてこともあります^^
熟成後は、無印のフタ付のPPボックスの中にダンボールを四方において(フェリシモの箱なので見た目もよいです)、乾燥剤(ミズトリゾウサンです)入れてその中にいれてます。で、そのまま部屋の中の暗くて涼しそうなところにおいてます。ゆっくり乾燥が進むので、時間が経ったものは使いはじめの角が痛いくらいですケド。。
その中に入れても酸化するものはしちゃいますけどね(^^ゞ
緑茶インフューズを使ったものは、あまり酸化しないようでした。1年半物使いましたが、微妙に油のにおいがたってきたかな?という感じでした。
なんでもかんでもインフューズするわけにはいきませんが、これもよい手カモ、と思ってます。

また遊びにきますね!
では!
by ion (2006-05-24 12:04) 

ゆりくま

>ionさん、石鹸大好きさん、こんにちは。
そうなんですよ、おいしいオイルや肌によいオイルは痛みやすいんですよね。 わたしは石けんに過剰に効果を期待しないほうが良いと思っている派なので、さっさと食べたり塗ったりしちゃいます。シソの実油はおいしいらしいですね。気になる。。。

ionさんの保管方法は、実は考え中です。今の在庫は缶に入る程度なのですが、もう少し増えてきたら、密封できる食品保存用の大きい蓋付きケースに水とりゾウさんかなと。
あと、長くなるのと、失敗すると悲惨なので本文には書きませんでしたが、十分乾燥した石けんなら脱酸素剤として使い捨てカイロが使えます。冷凍用のシールパックに石けんと脱水剤(シリカゲル、石灰、重曹など)ともに入れて、ストローで真空にしながら口を閉じ、冷暗所保存すればかなりいけるとのこと。ただ何度も封をあけるわけには行かないので、「これは来シーズンまでお蔵入り」のときに向く方法と思います。

インフューズドは、クロロフィルが酸化促進するので、抗酸化成分とのバランス次第で両羽の剣かなと思っているのですが。。。緑茶はよいほうへ行くのですね。
実はこの緑茶インフューズドをこの週末にでもと計画中なのです。グッドタイミングで勉強になっちゃいました♪
by ゆりくま (2006-05-25 18:51) 

yuki

こんにちは~♪
酸化の件、興味津々読ませていただきました。
実は手作り石鹸歴6年くらいでしょうか?なぜか酸化させたことありません。
我が家には4年前に作った石鹸も健在しております。(作りすぎちゃって・・)
グレープシード50%で作っても酸化したことないんですよ。(無香料)
不思議です。
友人と一緒に作った石鹸を半分ずつにしたのですが、私の石鹸は酸化せず、友人の石鹸は酸化したのです。
なんでなんだろぅぅぅ。
理由がわかれば、友人にもアドヴァイスできるのですが。
ゆりくまさんならきっと解明できるはず!(なんて、半ば脅しになっちゃった~)
アドヴァイスお願いします。

ちなみにひばりが丘のモンブランのお店は「エリュシオン」っていうお店です。
私も、もう一度食べたいって思ってますが、池袋線って行く機会がないのですよぉ。
by yuki (2006-05-27 13:05) 

ゆりくま

>yukiさんこんにちは。
酸化しないんですか?!ウラヤマシイ。。。
お友達と半分こでということなら、やはり保管方法でしょうか。光や温度って結構侮れないのですよ。あと、素手でさわらないとか。
ところで、グルグルするときの容器は何を使っていらっしゃいますか? 本文には無視したいとかきましたが、やっぱりガラスのボウルの方が確実かなぁと思ったりします。

モンブランのお店、興味津々です。何かついでを作らなくては。
by ゆりくま (2006-05-27 17:19) 

モンブラン・ユキ

yukiですがHN変えました。
もともとありがちな名前でかぶることも多いかと・・・。
ところでですね、石鹸を作るときのボールですが普通のパイレックスです。
え~関係あるんですか?さすがゆりくまさん。
石鹸の保管の仕方については、全くもって気を使ってないです。
ベットの下の箱に入れっぱなしです。
強いて言えば、我が家は古~い日本家屋で、地震がきたら即壊滅といえるほど、隙間風ぴゅーぴゅーです。
良く言えば、風の流れる家です。(良く言いすぎでした)
by モンブラン・ユキ (2006-06-01 16:26) 

ゆりくま

>モンブラン・ユキさん、こんにちは。
そうですねー、あそこの板にも全角のyukiさんいらっしゃったみたいだし、HNってムズカシイですよね。

えっと、ステンレスの鍋はアルカリに耐性があるのでよく使われているし、私も使っていますが、ステンレスというのは鉄、クロム、ニッケルの合金で、特に鉄やクロムは酸化を促進させる触媒として作用します。ぐるぐるしている間に鍋肌がそういう作用をしている・・・というわけではなく、泡立て器に削られて微量に石鹸生地に溶け込んだそいつらがじわじわと効いて、半年か一年かという差を生み出す可能性はあると考えられます。

そういうことで、本当に気にするならガラスがいいのかなと思うのですが、直火にかけられないしなぁ。。。
by ゆりくま (2006-06-03 00:09) 

ふぉり

はじめまして、手作り石けんの酸化の臭いに関する疑問です。

油脂化学関係の本には、油の酸化そのものを記述されていますが、石けんの劣化に関する記述がない、というのも多少気になっております。
 試しに太白ごま油を、空気にさらして、臭いをかいでみたところ、やはり、粘土の臭いがいたしました。
あの、特有の臭いは、アルデヒドなんでしょうか?
実験レポ応援いたします。
by ふぉり (2006-06-16 11:36) 

ゆりくま

>ふぉりさん、ようこそ。はじめまして。
油の酸化は、すなわち脂肪酸の酸化と考えてよいです。
自動酸化といわれる現象の初期段階では、油脂の加水分解で生じた遊離脂肪酸が開始物質になります。これが不安定な過酸化物になって、他の遊離酸や不飽和脂肪酸部分をどんどん攻撃し、分解物、カルボニル化合物や炭化水素を発生させます。
臭いは、このカルボニル化合物(アルデヒドもそうですね)、短鎖の遊離酸などが主な原因とのことです。

石けんにおいても同様で、過剰油脂を残すためにどうしても遊離酸の生成が避けられません。遊離酸ができてしまえば、あとは脂肪酸が鹸化していようと、油脂で残っていようと、不飽和脂肪酸から順々に過酸化物の餌食になるのは避けられないということだと思います。言い換えれば、鹸化率の高い石けんが長持ちするのは、遊離酸が発生しにくいことが要因のひとつであるといえます。

(以上 受け売りです。有機化学大嫌いなので細かいことを聞かないように)
by ゆりくま (2006-06-16 20:23) 

未来

ゆりくまさん、こちらのサイトにはいつもお世話になっています。
何年か前にこの記事を拝見して、非常に参考にさせていただきました。
私は沖縄県で石鹸を作っているので、高温多湿の環境で、石鹸の劣化が非常に気になります。
最近思い立ったことなのですが、劣化を防ぐためにエージレス+シリカゲルで保管をした場合、石鹸の「熟成」はストップするでしょうか。
それとも熟成に酸素は関係無いでしょうか。
プレゼントなどにする石鹸はなるべくなら大気の湿気に触れないように密封したいのです。置いておくだけで汗だくなので・・・

随分前の記事にコメントさせていただいて恐縮です。
これからも素敵な記事を楽しみにしております。
by 未来 (2012-08-23 14:25) 

ゆりくま

■未来さん、こんにちは。遅くなってごめんなさい。

1ヶ月とか、一通り乾燥したあと、パックするということですよね。
熟成っていたい何と言われると、さらに乾燥が進んでいるだけで、それ以外に起こっていることは大抵劣化に向かう現象ばかりだと考えられます。
酸素を遮断することは劣化に対して非常に効果的です。
エージレスに対応した袋は気密性が高いので湿気の出入りもなくなり、乾燥もストップします(シリカゲルが吸える量の水分なんてほんの少し)。従って未来さんが熟成と考えている現象の大半はストップすることになるのではないでしょうか。
温度変化による水分やグリセリンの内部移動は避けられません。

こんなところです。

by ゆりくま (2012-08-26 16:05) 

未来

ゆりくまさん、お返事ありがとうございます。
おっしゃる通り、一通り乾燥乾燥させ(防湿容器に小型除湿機をいれています)た後にパックします。

熟成って一体なにかというと、というご説明にはっとしました。
今までなんとなく信じてきた、「長期熟成された手作り石鹸は泡立ちも良くとてもマイルド」なんてことに、自分の中で根拠が無かったです。
私が熟成と考えていた現象そのものがよくわかっていませんでした。
あいまいな質問にお答え頂きありがとうございます。


by 未来 (2012-08-27 05:13) 

未来

この後、熟成について言及されている記事をいくつか読ませていただきました。大変勉強になりました。ありがとうございます。
マイルドになる=アルカリが落ち着くことによる
泡立ちが良くなる=水分が少なくなることによる
という認識をいたしました。

アルカリが落ち着くには、大気との接触が必要そうです。
以前1年以上たった石鹸でピリピリすると言われた事があるので、
(この時の石鹸は水分が25パーセントで、ひょっとして遊離アルカリが多くなってしまっていたのかと思っています)、アルカリが落ち着く現象は、ある程度以上進まないのかな?と想像しました。
なので、じゅうぶん乾いた!と思う時点で、私の考えていた熟成というものもじゅうぶん進んだ、と考えていいのかなあ、と思いました。
by 未来 (2012-08-27 06:10) 

ゆりくま

■未来さん

水分の移動と、石鹸の内部が空気に触れるようになることとは関わりがあります。
昔の洗濯用石けんの作り方では過アルカリで作った固形石鹸をできるだけ砕いて空気に晒し、苛性ソーダを助剤の炭酸ナトリウムに変えるというものがあります。
未反応アルカリが潰れるのはこれと同じ理屈ですね。
さらに炭酸水素ナトリウム(重曹)にまで変化すればマイルドと言えるのでしょうが、この反応は非常に遅いです。

まあ、十分乾いた!= 熟成が十分進んだ と考えて差し支えないと思います。

by ゆりくま (2012-08-31 01:15) 

未来

おお、なるほど!
水分の移動過程で、内部が空気に触れることができる。
すなわち、乾燥過程で、ということですね!
ものすごく腑におちました。
ありがとうございました。
by 未来 (2012-09-01 03:59) 

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