ビタミンE [├ 用語・材料・化学っぽいこと]
前回 油脂の酸化重合の話をかいたので、そこから派生したトピックをもう一つ。
天然の酸化防止剤として油脂が含有していることが多いのがビタミンE(トコフェロール)です。
ビタミンEのような酸化防止剤は酸化を進行させるフリーラジカルを不活性化し、自動酸化(酸化の連鎖反応)を阻止します。
その効き目は確実で絶大ですが、加えるタイミングや濃度には微妙なさじ加減があるようです。
代表的な食用油脂のビタミンE(トコフェロール)含有量を下表に示します。
α-トコフェロールでみると、ひまわり油で 38.7mg/100g、つまり0.0387%を含有しています。
・主な油脂類のビタミンE(トコフェロール)含有量 (mg / 100g中)
α | β | γ | δ | |
オリーブ油 | 7.4 | 0.2 | 1.2 | 0.1 |
ごま油 | 0.4 | tr | 43.7 | 0.7 |
米ぬか油 | 25.5 | 1.5 | 3.4 | 0.4 |
大豆油 | 10.4 | 2.0 | 80.9 | 20.8 |
なたね油 | 15.2 | 0.3 | 31.8 | 1.0 |
パーム油 | 0.4 | tr | 0.1 | tr |
ひまわり油 | 38.7 | 0.8 | 2.0 | 0.4 |
ラード | 0.3 | tr | 0.1 | tr |
下に示す図は、もともとほとんどビタミンEを含有していないラードにさまざまな濃度でビタミンEを添加し、空気で酸化される速度(過酸化物濃度の変化)を比較したものです。
上の段は ゼロから0.0156%、下の段は0.031%から0.5%のグラフです。
どの濃度でも空気を吹き込むとだんだん過酸化物の量が増加していき、図中で酸敗臭を示すとされる矢印以降は急激に立ちあがっています。
ここで注目すべき点は2つあります。
1)酸化防止剤は酸化の誘導期に進行を抑える効果はあるが、誘導期を過ぎてしまえばその濃度にかかわらず同じ速度で酸化が進む。
つまり本格的に酸化が始まってからでは全く効果がない。
2)ゼロ(無添加)から、添加量を増やしていくと酸化速度が抑えられるが(グラフ上段)、
0.031% ~ 0.062%を超えると逆に酸化が進みやすくなる(グラフ下段)。
奇しくも0.031% ~ 0.062%というのは天然の植物油脂身が含有している濃度レベルの上限あたりにほぼ等しくなっています。天然に近い濃度で最も高い酸化防止能を発揮し、それ以上では逆に酸化促進剤として働いてしまうということです。
さすが天然の酸化防止剤というべきか、加減を知っている植物の素晴らしさというべきか、なんとも不思議で複雑な作用です。
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■参考書籍
・「新版 脂肪酸化学 第2版」 稲葉恵一ら 幸書房 1997
・「五訂増補 日本食品標準成分表」 文部科学省 科学技術・学術審議会・資源調査分科会報告 2005
Facebook コメント
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とても興味深いお話ありがとうございます。
ビタミンEは酸化防止になるからと、やみくもに入れては逆効果ということですね。
天然のものはやはり絶妙なバランスを保っているんですね~、すごい。
あらためて自然のすごさを感じました。
by あまのはづき (2010-12-02 07:01)
今年の夏は酸化防止のつもりでビタミンEを使っていましたが、あまり効果を感じなかったんです。
むしろ酸化したときもあって・・・入れるタイミングだったのか、量が多かったのか?
石けんに入れるなら少量でよく、タイミングとしては計量して加熱前、というところでしょうか?
実際にはROEやinfオイルの方がはっきりと抗酸化効果を感じました。
by キョロ (2010-12-02 10:06)
▼コメントありがとうございます。
■あまのはづきさん
入れ過ぎは逆効果みたいですね。
自然のバランスって本当にすごいと思います。
■キョロさん
VEオイルの濃度や活量も計算して入れ過ぎないようにしないといけないのかもしれませんね。
入れるのは加熱前だし、石けん用と決めているオイルなら使いきれない分のことも考えて開封時に瓶に入れてしまうのもありかと思います。
by ゆりくま (2010-12-04 22:06)