樹脂石けん(実験:古典石けんへの道) [■手作り石けん記録]
この夏の自由研究はクラシックな石けんのレシピ探求です。
クラシックといっても現代の私たちが不満無く使えるような石けんができてきたのは純度の高い苛性ソーダが工業的に造られるようになった1800年代以降のこと。
それ以前の草木灰(軟石鹸)、海草灰(固形石鹸)にさかのぼるのは少々作業負荷が高いため、せいぜい19世紀後半以降、日本では戦前の昭和くらいを再現してみたいなと思っています。
第1弾は、今はほとんど化粧石鹸原料としては使われていない「樹脂:ロジン:松脂」を使った石鹸を考えています。
今回はその予行練習です。
写真が ロジン : 松脂 です。松の木の樹液から精油成分(テレピン油)を取り去った後に残る樹脂分で、分かりやすいところでは野球で使う「ロージンバック」の滑り止め成分、または映画や舞台(コント?)で使われる「割れるビール瓶」の素材でもあります。工業的には製紙工業で最も多く用いられます。
---------------
ロジンについて
少し昔の日本では、松脂は獣脂や植物油より安価で入手しやすく、気泡力のある石鹸が得られることから、戦前~戦後しばらくは主要な石鹸原料として取り扱われてきました。(油脂の石けんの一部に樹脂を混合する使い方)
透明石けんの素材としても使われていたようです。
また南北戦争の頃の米国では白い石鹸が作られておらず、黄色いパインタール石鹸が主流でした。
もちろん今でも松脂の石鹸は製造・販売されています。アメリカではボディ用、シャンプー用で比較的メジャーな存在のようです。
日本では洗濯、台所用のものが見受けられます。(エコを謳っているものもあるみたい。一般の石鹸に比べて何が特別エコなんだかよく分かりませんが。)
化粧品原料として使われることもあります。主にヘアスプレーやネイルラッカーの接着剤用途ですが、クリームに使うといううわさも・・・。
ただし、ロジンは旧表示指定成分です。皮膚トラブルの原因になる可能性が少し高いかもしれません。(ロジン酸せっけんは指定成分ではありません)
ロジンの主成分は樹脂酸と呼ばれる酸で、C20のアビチエン酸とその異性体になります。
詳しくは ハリマ化成さんのサイト を参照ください。
必要なアルカリの量は酸価から求められます(酸のため、鹸化価とはいいません)。
私が購入したものはガムロジンで酸価168~180 KOH-mg/g なので平均して174とすると、NaOH換算で124になります。
ちなみに物性値
酸価168~180 KOH-mg/g
軟化点70~80℃
灰分0.002以下
外観 淡黄色
※販売元からいただいた購入仕様書の値なので、上述のハリマ化成で紹介されている物性値とは若干異なります。
---------------
さて、本番ではCPソープの一部をロジンにしたものを考えているのですがあまりに得体が知れなさ過ぎるので、その前にロジン単体で石鹸にしてみました。
その模様のレポートです。
ロジンは酸のため、苛性ソーダを使わなくても炭酸ナトリウムによる中和で石鹸になるはずです。
上記の酸価から、Na2CO3(無水)相当の必要量は165mg/gで、以下のレシピでやってみました。
全体量が少なくて湯煎中に水分がなくなりそうだったので相対的に水が多くなっています。
ロジン 30g
精製水 30g
炭酸ナトリウム 5g
▼反応中
砕いて粉にしたロジンを少量ずつ、炭酸ナトリウム水溶液に混ぜていきます(軟化点以上になるように湯煎で加熱中)。
はじめは軟らかくなったロジンが分離していましたが、混ぜているうちに一体化してきました。石鹸ができているのかな?
湯煎の火を止めていてもポコポコと泡が出るのも、Naが消費されて炭酸が発生していることを予感させます。いい感じ。
▼ロジンを全部入れ終わった頃
なんかヤバイ見た目の物体になっていますが・・・。 大丈夫かな。
とりあえずこのモッタリ味噌を小さいシリコン型に入れて放置中。
ボウルや薬匙に残ったものは結構ネチャネチャ、コテコテで、取れるかどうか心配。
▼せっけんと思われるブツでボウルを洗ってみる
おお!泡立った!
大きな泡が出るけど泡持ちはめちゃめちゃ悪く、カメラを準備している間にどんどん消えてしまう~。
ボウルと薬匙は生成したロジン石鹸でかなりきれいに洗えました。一応ちゃんと石鹸の性能を有する模様。
反応しないで匙やボウルの縁にこびりついていた樹脂は、熱湯を張って少量の炭酸ソーダと共にかき混ぜたらあっさり取れました。
洗った手は・・・少し松脂独特のぺたっ・きゅっとした感じが残りましたね(滑り止めつけてる状態)。
何はともあれ石鹸になることがわかったので、CP石鹸に配合する作戦、決行です。レシピ考えます。
ロジン100%石けんの完成品は追って写真を公開します。
水分多いのでなかなか乾燥しなさそうです。
参考文献も追って追記する予定です。
※当ブログ内の手作り石けん・化粧品等の使用感は私(ゆりくま)の個人的な感想です。すべての人が同じように感じられるとは限りませんし、材料が合わない可能性もあります。特にロジン自体は本文中にも書いたように化粧品の旧表示指定成分です。参考にされる場合には十分ご注意ください。
クラシックといっても現代の私たちが不満無く使えるような石けんができてきたのは純度の高い苛性ソーダが工業的に造られるようになった1800年代以降のこと。
それ以前の草木灰(軟石鹸)、海草灰(固形石鹸)にさかのぼるのは少々作業負荷が高いため、せいぜい19世紀後半以降、日本では戦前の昭和くらいを再現してみたいなと思っています。
第1弾は、今はほとんど化粧石鹸原料としては使われていない「樹脂:ロジン:松脂」を使った石鹸を考えています。
今回はその予行練習です。
写真が ロジン : 松脂 です。松の木の樹液から精油成分(テレピン油)を取り去った後に残る樹脂分で、分かりやすいところでは野球で使う「ロージンバック」の滑り止め成分、または映画や舞台(コント?)で使われる「割れるビール瓶」の素材でもあります。工業的には製紙工業で最も多く用いられます。
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ロジンについて
少し昔の日本では、松脂は獣脂や植物油より安価で入手しやすく、気泡力のある石鹸が得られることから、戦前~戦後しばらくは主要な石鹸原料として取り扱われてきました。(油脂の石けんの一部に樹脂を混合する使い方)
透明石けんの素材としても使われていたようです。
また南北戦争の頃の米国では白い石鹸が作られておらず、黄色いパインタール石鹸が主流でした。
もちろん今でも松脂の石鹸は製造・販売されています。アメリカではボディ用、シャンプー用で比較的メジャーな存在のようです。
日本では洗濯、台所用のものが見受けられます。(エコを謳っているものもあるみたい。一般の石鹸に比べて何が特別エコなんだかよく分かりませんが。)
化粧品原料として使われることもあります。主にヘアスプレーやネイルラッカーの接着剤用途ですが、クリームに使うといううわさも・・・。
ただし、ロジンは旧表示指定成分です。皮膚トラブルの原因になる可能性が少し高いかもしれません。(ロジン酸せっけんは指定成分ではありません)
ロジンの主成分は樹脂酸と呼ばれる酸で、C20のアビチエン酸とその異性体になります。
詳しくは ハリマ化成さんのサイト を参照ください。
必要なアルカリの量は酸価から求められます(酸のため、鹸化価とはいいません)。
私が購入したものはガムロジンで酸価168~180 KOH-mg/g なので平均して174とすると、NaOH換算で124になります。
ちなみに物性値
酸価168~180 KOH-mg/g
軟化点70~80℃
灰分0.002以下
外観 淡黄色
※販売元からいただいた購入仕様書の値なので、上述のハリマ化成で紹介されている物性値とは若干異なります。
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さて、本番ではCPソープの一部をロジンにしたものを考えているのですがあまりに得体が知れなさ過ぎるので、その前にロジン単体で石鹸にしてみました。
その模様のレポートです。
ロジンは酸のため、苛性ソーダを使わなくても炭酸ナトリウムによる中和で石鹸になるはずです。
上記の酸価から、Na2CO3(無水)相当の必要量は165mg/gで、以下のレシピでやってみました。
全体量が少なくて湯煎中に水分がなくなりそうだったので相対的に水が多くなっています。
ロジン 30g
精製水 30g
炭酸ナトリウム 5g
▼反応中
砕いて粉にしたロジンを少量ずつ、炭酸ナトリウム水溶液に混ぜていきます(軟化点以上になるように湯煎で加熱中)。
はじめは軟らかくなったロジンが分離していましたが、混ぜているうちに一体化してきました。石鹸ができているのかな?
湯煎の火を止めていてもポコポコと泡が出るのも、Naが消費されて炭酸が発生していることを予感させます。いい感じ。
▼ロジンを全部入れ終わった頃
なんかヤバイ見た目の物体になっていますが・・・。 大丈夫かな。
とりあえずこのモッタリ味噌を小さいシリコン型に入れて放置中。
ボウルや薬匙に残ったものは結構ネチャネチャ、コテコテで、取れるかどうか心配。
▼せっけんと思われるブツでボウルを洗ってみる
おお!泡立った!
大きな泡が出るけど泡持ちはめちゃめちゃ悪く、カメラを準備している間にどんどん消えてしまう~。
ボウルと薬匙は生成したロジン石鹸でかなりきれいに洗えました。一応ちゃんと石鹸の性能を有する模様。
反応しないで匙やボウルの縁にこびりついていた樹脂は、熱湯を張って少量の炭酸ソーダと共にかき混ぜたらあっさり取れました。
洗った手は・・・少し松脂独特のぺたっ・きゅっとした感じが残りましたね(滑り止めつけてる状態)。
何はともあれ石鹸になることがわかったので、CP石鹸に配合する作戦、決行です。レシピ考えます。
ロジン100%石けんの完成品は追って写真を公開します。
水分多いのでなかなか乾燥しなさそうです。
参考文献も追って追記する予定です。
※当ブログ内の手作り石けん・化粧品等の使用感は私(ゆりくま)の個人的な感想です。すべての人が同じように感じられるとは限りませんし、材料が合わない可能性もあります。特にロジン自体は本文中にも書いたように化粧品の旧表示指定成分です。参考にされる場合には十分ご注意ください。
Facebook コメント
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おおおおお~!
すごい~、さすがゆりくまさん、どんなものにも挑戦するのですね
CP石けん楽しみです♪
松脂でできるならミルラやフランキンセンスでもOKですよね
でも硬いバリアで覆われたような使用感を想像します
使い心地はいいのでしょうか??
by 砂ねこ (2008-07-07 15:36)
おっ!最近どこかの石けんか何かに(曖昧)
「松脂」と書いてあって
何だろう?って思っていたのですよー!!
ナイスタイミングです♪
オイルでは無く酸の方だったとは!
続き楽しみにしております^^
by ノギス (2008-07-07 20:25)
▼砂ねこさん、ノギスさんこんにちは。
■砂ねこさん
まさに、フランキンセンスやミルラ、樹脂の組成を調べようと思っているところです。以前フランキンセンスの樹脂を砕こうとして(道具が)ひどい目にあったことがあるので、復讐してやりたいのだ。
松脂100%石鹸使用感、ボウル洗っただけですが、手にはまさにロージンバッグを触った後のようなキュキュッと感が残ります。
髪がコーティングされてシャンプーによいという感想もあるようですが。。。どうだろう。
■ノギスさん
樹脂酸でーす。
案外普通に使える石鹸でした。
どうやって石鹸に盛り込もうかなぁ。
by ゆりくま (2008-07-08 00:54)
ロジン!
去年、何の考察もなく、ただただロジン入りの透明石けんを作りました。
透明石けんに関しては、
泡立ち、透明感に貢献する気がします。
(色は茶色っぽくなるんですけど)
香りが妙に気に入ってしまいました。
好みが分かれそうでしょうか。
今更ロジンってそういうものだったんだ~
と気づきました。
ゆりくまさん、さすが!
by ハタヤ商会 (2008-07-08 23:01)
ロジンの石けん!?
ふわーすごい、恥ずかしながら初めて聞きました。
知ってても難易度高すぎておいらにゃ無理だ(^^;
古典石けんへの回帰というのも面白いですね。
じゃぁ私は肉を焼いて灰に滴り落ちた油が本当に石けんになるのか実験をば・・
炭と卓上七輪でいけるかな?
(すみません、嘘です)
by ami (2008-07-10 22:29)
▼ハタヤ商会さん、amiさん、こんにちは。
■ハタヤ商会さん
元が透明な固体ですから、透明石鹸にはもってこいですよね。
ロジン100%石鹸は水分が多くてシリコン型から出てきませんが、結構つやつやしていてきれいですよ!
香りは。。。松の匂いそのもの過ぎて好き嫌いが分かれそうですね。
■amiさん
あんまりすごくないですよ。ある意味お手ごろ素材ですし。
肉を焼いた油が滴り落ちた灰での洗浄!
是非レポートお待ちしてます♪
by ゆりくま (2008-07-13 15:14)
こんにちは!
はじめておじゃまします。
ロジン、フェイラー女史もお気に入りですよね。
ぜひ石けんに投入してみたいと思いつつも手に入らず
あきらめておりましたがますます作りたくなってしまいました。
大変参考になります!
ありがとうございました(^^)
by べびきん (2008-07-14 21:30)
■べびきんさん、こんにちは。はじめまして。
フェイラー女史の大好きな透明素材ですもんね。
もちろん参考書籍にも登場する予定です。
ロジンは安いものなので、結構大量に買わないといけないんです。
私は油脂問屋さんで買いましたが、石鹸素材として取り扱っているネットショップも見かけたことありますよ。(無意味に高かったけど)
まだ続きがある予定なのでお楽しみに。。。(と自分にプレッシャーをかける)
by ゆりくま (2008-07-15 01:07)