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石けん本 (Scientific Soapmaking) [└ 石けん本]



引き続き石けん本をぼちぼち紹介していきます。

今回は以前にTAOさんも紹介されていたので読んだ方も多いのではないかと思う、Scientific Soapmaking 直訳「科学的な石けん作り」です。

Scientific Soapmaking: The Chemistry of the Cold Process

Scientific Soapmaking: The Chemistry of the Cold Process

  • 作者: Kevin M. Dunn
  • 出版社/メーカー: Clavicula Press
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: ペーパーバック


タイトルからして難しそうですが、頑張って読んだら勉強になるんじゃないかと期待できます!

ざっくり目次を紹介します。
I. Experimental Soaps (試験に供した石けん) P.1 -
道具、材料、計量方法、計算方法、第II部以降で参照する試験用石けんのレシピ、作成手順など
II. Basic Chemistry (基本の化学) P.123 -
水と油、酸と塩基、量論式、脂肪酸、アルコールとエステル、鹸化、石けんと洗剤
III. Quality Control (品質管理) P.237 -
水分測定、遊離アルカリ測定
IV. Quality Assurance (品質保証) P.253 -
苛性ソーダ純度、遊離酸測定、鹸化価測定
V. Research & Development (研究開発) P.277 - 354
オレンジスポット、スーパーファットと苛性ソーダのディスカウント、ウォーターディスカウント、鹸化時間と温度、トレースまでの時間


第I部は正確に実験するための量り方、計算方法が繰り返し繰り返し語られて、正直きついです。

第II部は読む価値あり。ここを読まないとこの本を買う意味がないといってもよいでしょう。
基礎化学から「石けん」に関する部分だけを的確に抜き出してあり、よくまとまっています。
ただ当たり前ですが英語なので、日本語のテクニカルタームへの置き換えがスムーズにできないとつらいかもしれません。
内容的にハイスクールの化学程度とのことですが、私の時代(の日本)には高校の有機化学で教えてもらえず大学で非常に苦労して、結果 有機化学が大嫌いになった原因の箇所が含まれています。今は高校の範囲なのかな。

第III部、第IV部は自分でやってみたい人向き。

第V部、ここが一番わかりやすくて読むには面白いところですが、ページの配分を見てもらえれば分かる通り、後半のほんの少しです。第IV部までの理論や実験手順に非常に多くのページが割かれているのです。疲れてここまで到達できない人もいるのでは。。。(かといって前半を読まないとサンプルの石けんの配合などが分からないし)

目次にあげたような項目、よくある防腐剤/抗酸化剤が効くのかどうか、苛性ソーダをディスカウントするのと一部のオイルを後入れするのとで何か違いが出るのか、水分をもっと少なくした時の影響、温度の影響(特にジェルステージとの関わり)、トレースまでの時間に影響を及ぼす因子、それぞれについて実験検証を行っています。

実験結果としてはそれほど意外なことはありません。
そんな中で覆されている黄金則を紹介すると、苛性ソーダをディスカウントするのと、トレース時に後入れで一部のオイルをスーパーファットとして加えるのを比較した結果、(全体としてのディスカウント/鹸化率やオイル組成が同じという前提で)最終的な石けんの組成はほとんど変わらないので、すべてのオイルを初めに混ぜてしまって苛性ソーダをディスカウントすれば十分、というものです。

私としては、いくつかの項目(ジェル化やトレースなど)については「石けんまわりの化学」の記事で取り上げたテーマで、当時各種の文献から推定して書いたことに対して肯定的な実験データが示されて、少々心強く感じている次第です。



amazon.comのレビューでは星5つ連発。前に紹介したSmart Soapmaking のAnne L. Watsonさんも大絶賛です。
しかしQ&Aサイトなんかでは「化学の勉強にはなるけど量り方が多すぎ」的な意見も見かけます。


私が実際に読んだのはもう半年以上も前のことで、この記事を書くために再度手にとっては見たものの、文字ばっかりで実験方法の説明ばっかりだったという印象以外はほとんど何も思い出せず。。。 少々読み返さなくてはいけませんでした。各章の「まとめ」的なところだけ拾い読みしたのですが、それだけでも十分また勉強になりました。
正直文字ばかりで楽しくない本ですが、英語の勉強も兼ねてコツコツ読んでみるのもいいかもしれません。自分で真似して実験までやる気のない人は調製手順の項を飛ばすようにすればだいぶスピードアップが図れると思います。

そして、読むからには頑張って第II部を制覇してください!


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じゅねこ

ゆりくまさんのサイト、いつも参考にさせてもらっています。素敵な石けんや楽しい?実験の結果をいつも公開して頂いていてありがとうございます。

それで、スーパーファットとディスカウントに関してですが「ディスカウントしているんだから、スーパーファットした分だって、これからまだ鹸化が進むプロセスの中ではいくらか鹸化しちゃうんじゃないの?」となんとなく思っていたので、思わずコメントしています。

やっぱり高いオイルでも、最初からたっぷり入れないと意味がない、体感出来るほどの違いはでないってことですか。。。高価なオイルをちょこっと後入れしてその効果を十分残したいという淡い希望はかなわないんですね。

ホホバオイルを後入れすると、髪を洗った時のくし通りが良いような気がするのも、気のせいだったのか。

それにしても、ディスカウントの分、鹸化しないで残る脂肪酸があるわけで、それって何が残るのかはどう決まるのか?と新たな疑問がわきました。
by じゅねこ (2011-05-17 13:32) 

ゆりくま

■じゅねこさん、こんにちは。

この本では3ケース実験していますが、結果として後入れしたオイル(に特徴的な脂肪酸)がより多く残るということはなかったとのことです。
トレース時の鹸化率はせいぜい30%程度、まだまだ反応はこれからという段階なので、後入れの効果は小さいのかもしれませんね。
著者はこの結果に対してソーパーから意義が出ることを覚悟しているようで、明らかに違うというオイルがあるなら追試するから知らせてくれとまで書いています。その後を知ることができるとよいのですが。

ホホバはまた特別でこれはほとんど鹸化しないのです。以前このブログでお付き合いのあった方も実験してくれましたが、いつまでたっても油と水だったとのこと。つまり先入れでも後入れでもホホバとしての良さがしっかり残るはずです。
私も個人的にはしっかり残るホホバやスクワランをSFするのが大好きです。

上記の実験からはディスカウントしたときに残りやすいオイルについての結果も副次的に読み取れます。
それはずばり「反応の遅い不飽和脂肪酸」です。

このあたりはボリュームのある話になるので、また機会があれば記事の方でじっくり取り組んでみたいと思っています。

今後ともよろしくお願いします。
by ゆりくま (2011-05-17 23:01) 

じゅねこ

う〜ん、またまた興味深いご回答ありがとうございます。

ホホバの効果が気のせいじゃなくてほっとしました。でも、先日作った石けんに日焼け防止効果を期待してマンゴーバターをSFしたのはあまり意味なかったかもしれませんね。

「反応の遅い不飽和脂肪酸」知りたいです。気長に、楽しみに、記事をお待ちしていま〜す。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
by じゅねこ (2011-05-18 13:28) 

ゆりくま

■じゅねこさん

スーパーファットする油脂に対して何を期待するのか、それは何によってもたらされるのかを考えることが大事だと思います。
油脂として残存させたい脂肪酸なら後入れでも先入れでも同じという結果ですが、他の不鹸化物、微量成分ならどうでしょうか。マンゴバターの日焼け防止効果がどのような成分の効果なのか知らないので個別のことは言えませんが・・・。

反応の遅い不飽和脂肪酸とは、いわゆる不飽和脂肪酸のことです。
飽和脂肪酸は反応が速く、不飽和度が高くなるほど反応は遅くなります。
by ゆりくま (2011-05-21 23:45) 

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